下肢静脈瘤とは

下肢静脈瘤は自然に治癒するものではありません。状態が悪化する生活に支障を来す可能性があるので、適切な治療や予防方法、ケアの方法など、正しい知識を身につけて、この疾患を早く快方するようにしましょう。

間違った認識・落とし穴

見た目の問題と片付けられてしまう

図1 下肢静脈瘤は、良性疾患のため見た目の問題と扱われるケースがあります。しかし、放置していても自然に治ることはありません。進行すると足の血管が膨らんで見た目が悪くなるほか、足のむくむ、足が重い、だるい、夜寝ている時に足がつるといった症状が強くなることがあります。また、足の血流が悪くなることで強いかゆみや湿疹、色素沈着などの皮膚炎症、皮膚に穴があく潰瘍(かいよう)ができることもあります。
さらに、血栓性静脈炎といって静脈瘤の中に血の固まり(血栓)ができる場合があります。この場合は静脈瘤が赤く腫れてズキズキと痛くなります。ひどい場合は熱が出ることもあります。血栓性静脈炎を起こした時はすぐに下肢静脈瘤専門クリニックや心臓血管外科のある病院を受診して、適切な処置を行う必要があります。
したがって、足がむくむ・重い・だるい・寝ている時に足がつる・血管が浮き上がっている・湿疹や色素沈着・潰瘍がある場合は、下肢静脈瘤専門クリニックや総合病院などの血管外科で下肢静脈瘤外来を行っている病院で検査を受けた方が良いでしょう。
治療を行うかについては、主治医の先生とよく相談されることをお勧めします。

大学病院で診てもらった方が安心

下肢静脈瘤の診療科目は、心臓血管外科・血管外科です。
ただ、大学病院の心臓血管外科・血管外科の専門は主に動脈です。動脈に関する診断・治療は経験豊富な先生がいますが、下肢静脈瘤のような静脈疾患に関しては、意外にも軽く扱われてしまうケースが多いようです。また、治療方法も昔から行われているストリッピング手術(標準外科手術)しか対応できない病院も多いようです。
現在は、下肢静脈瘤の専門クリニック・病院が増えていますので、症状が気になる方は、専門クリニック・病院で受診されることをお勧めします。

下肢静脈瘤のレーザー治療は1種類?

最新レーザー器機の例

※最新レーザー器機の例

下肢静脈瘤のレーザー治療は、総称して「下肢静脈瘤血管内レーザー焼灼術(endovenous laser ablation:EVLA)」と呼ばれます。
下肢静脈瘤血管内レーザー焼灼術(EVLA)」に使用されるレーザー機器は、レーザーの波長と発振方式の違いがあります。
連続波のダイオードレーザー(半導体レーザー)は、レーザー波長810nm、980nm、1470nm、2000nmの4タイプ。断続波のパルスヤグレーザーは1320nmの1タイプです。
ダイオードレーザーは連続波のため、熱を出し続けています。したがって、血管内の温度が高温となるとことが報告されています。
一方、パルスヤグレーザーは断続波のため、低温で治療が進むと報告されています。
また、波長の違いは、血液(ヘモグロビン)に吸収されるか水分に吸収されるかの違いがあります。
980nmはヘモグロビンに吸収されるので、血管内にある血液がレーザーの先端に焼付いてしまうという報告があります。一方1000nm以上の波長は水分に吸収されやすく、血管壁の水分に反応してレーザーの熱で血管を収縮させ閉塞させます。
それぞれの機種で治療効果や術後の合併症の違いがありますので、十分説明を聞いて納得してから治療に臨むことをお勧めします。
セカンドオピニオンも積極的に行うべきだと思います。
レーザー照射のメカニズム   レーザー治療後のイメージ

※レーザー照射のメカニズム

 

※レーザー治療後のイメージ

保険で受けられるレーザー治療は最先端治療と聞きました。

健康保険で受けられる下肢静脈瘤血管内レーザー焼灼術の機器は、残念ながら最新ではありません。今から10年前の2002年にアメリカFDA(日本の厚生労働省に当たる機関)です。日本では、2010年に薬事承認され、昨年2011年より保険適用となりました。
自由診療で受けられる下肢静脈瘤レーザー焼灼術の医療機器は、ダイオードレーザーの1470nm、パルスヤグレーザーの1320nmがあります。
日本ではまだ承認されておりませんが、アメリカではスタンダードに使用されている機器です。
医療機器の改良は日進月歩です。2011年には、日本人の体質に合わせて改良された1320nmパルスヤグレーザーが日本に入っており一部の専門クリニックで治療が行われています。
ただし、施設によっても治療効果や術後の合併症などは異なりますので、十分説明を聞き、納得して治療に臨むことが必要と思います。

レーザー治療はどんな静脈瘤でも治療ができると聞きました。

下記に示す症例の場合、レーザー治療は行えません。
  • 深部静脈血栓症(DVT)の場合
  • 静脈瘤のある血管の直径が4mm~10mmの範囲を超える場合(980nmレーザー)
  • TLA麻酔にアレルギーがある場合
  • 妊娠中の場合

弾性ストッキングを折り返して履いています。

弾性ストッキングは均一に全体を伸ばして履くことで、本来の効果を得ることができます。シワが入ったり、折り返して履いたりすると、その部分の圧迫圧が高くなり、血行が悪くなって、痛みが出たり、腫れたりすることもあります。